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Topics 文献抄読「橈骨遠位端骨折の掌側プレート固定術後の回復を遅らせる要因とは~」

近年、橈骨遠位端骨折は増加傾向にあります.橈骨遠位端骨折は術後1年以降も日常生活上での機能障害や活動制限を生じさせます.患者さんによって様々ではありますが,機能回復の経過を知ることは橈骨遠位端骨折の治療において重要ことです.そこでこの論文では,橈骨遠位端骨折掌側プレート固定術の患者さんにおける機能回復の遅延に影響する因子について研究しています.

【要旨】
対象は50歳以上の橈骨遠位端骨折後掌側プレート固定術例122例である.患者関連要因については,性別,骨密度,利き手を分類した.損傷関連要因については,AO分類,受傷機転を分類した.また治療関連要因については,手術からの期間,固定期間を分類した.また3ヶ月,6ヶ月,12ヶ月時に,ROM,握力,MICHIGAN HAND OUTCOMES QUESTIONNAIRE(MHQ)を評価した.MHQを従属変数,その他を独立変数として多変量回帰分析を行った.術後のリハビリテーションは,術後2週間はギプス固定,その後は取り外し可能なスプリント変更し,運動療法については指導のみである.結果は,1)高エネルギー損傷と重度な骨折型が,3ヶ月と6ヶ月におけるMHQを低下に関連していた,2)加齢と骨密度の低下は6ヶ月と12ヶ月でMHQの低下に関連していた.考察は橈骨遠位端骨折の掌側プレート固定術後の回復を遅らせる要因は,術後6ヶ月までは損傷関連要因であり,それ以降は患者関連要因が関連していると考えられる.しかし,研究の限界として,12か月間という限定された期間の研究であることや,橈骨遠位端骨折に関わる要因の多様性から,経済面や心理面などのさらなる要因を追加した長期経過の研究が必要といえる.

【批評】
・リハビリテーションの内容が,指導のみであるが,セラピストが治療を行った場合は結果が変わる可能性が考えられる.
・橈骨遠位端骨折は,加齢に伴い増加していくことが予測され,今後さらに多様な症例が現れる可能性があり,臨床的に参考になる知見であった.

【論文】
Factors Delaying Recovery After Volar Plate Fixation of Distal Radius Fractures
Young Hak Roh, MD, Beom Koo Lee, MD, PhD, Jung Ho Noh, MD, PhDemail, Joo Han Oh, MD, PhD, Hyun Sik Gong, MD, PhD, Goo Hyun Baek, MD, PhD
Journal of Hand Surgery 39(8),1465-70,2014.