Topics 文献抄読「骨折患者の連続的なQOLの変化:前向き研究」について
骨折患者への作業療法を実施するうえで、回復にどのくらい時間
がかかるか説明することは、対象者に安心していただくうえで大切な
基本となります。
本研究はアジアで初めて転倒骨折患者に行われた前向き研究です。
骨折前と骨折後を比較しており、健康関連QOLがいつまでに回復を
するのかの参考になります。
橈骨遠位端骨折での作業療法では、痛みの改善と、セルフケア以外
の家事や仕事などをいかに早く回復させられるのかが焦点となります。
作業療法の実施によって、橈骨遠位端骨折患者の健康関連QOLが
より速く改善することを望みます。
この論文からの見解では回復には3ヶ月から6ヵ月くらいかかります
との説明が妥当と思われました。
【タイトル】骨折患者の連続的なQOLの変化の前向き研究
【対象】股関節骨折(37名、平均年齢76.1歳)
脊椎骨折(35名、平均年齢72.6歳)
橈骨遠位端骨折(50名、平均年齢68.6歳)
【方法】骨折前、骨折後2週、3ヶ月、6ヵ月、1年でQOL評価表Euro QOL
5 Dimension(EQ-5D)*を調査し、骨折の種類ごとに比較を行った。
【結果】橈骨遠位端骨折は骨折後6ヵ月で骨折前と同様にQOLが改善
したが、股関節骨折と脊椎骨折は改善しなかった。骨折後1年では
脊椎骨折は改善が見られたが股関節骨折ではQOLの低下が残存
した。
橈骨遠位端骨折だけで変化をみてみると移動・セルフケア・不安など
は3ヶ月で改善するが、仕事などの普段の生活や疼痛などは6ヵ月でも
いくつかの問題があるとしている対象者が多く見られる。
【考察】股関節と脊椎骨折は橈骨遠位端骨折と比較して、重篤な健康関連QOL
の障害を長期にわたって引き起こす。橈骨遠位端骨折ではDolanらの研究
においても、当初の3ヶ月は痛みと機能低下を引き起こすが、急速に回復し
健康関連QOLの障害は少ないとされており、本研究の内容を支持している。
【論文】
H. Hagino , T. Nakamura, S. Fujiwara M, Oeki T, Okano, R. Teshima. (2009):
Sequential change in quality of life for patients with incident. clinical fractures:
a prospective study:Osteoporos Int 20:695–702
* EQ-5Dは北欧などで健康関連QOLを調査するのに用いられている評価方法であり、
移動・セルフケア・普段の生活・痛みや不快感・不安やうつなどの5つの分野について、
3段階(とても問題がある、いくつか問題がある、問題がない)で回答する評価表です。
日本語版は1998年に出ています(1